空生は、俺を選ぶ。
そう思っていた。
麻薬みたいに、作用する、俺等の関係。
なくなったら、発作が起きるようになってるから。
ー俺は、余裕だった筈なんだ。
「あれ、燈真帰って来たの?」
ルナに戻ると、崇が何食わぬ顔をして、カウンターに座っていた。
「お兄ちゃん、戻ってくるつもりだったんだ。」
葉月もシェイカーを振るいながら、俺を見て、不思議そうな顔をした。
客入りは上々。
最近零が帰って来たという噂が広まり、通い出す客が増えたからだ。
「うん、まぁね。」
葉月の作ったカクテルが、グラスに注がれるのを見届けてからカウンターの中に入った。
「用事が案外早く終わったから、帰って来た。葉月、代わる。ちょっと休憩取っていいよ。」
そう声を掛けると、葉月は、やった!とガッツポーズした。
「…零はどこ行ったの。」
こちらも何食わぬ顔して訊けば、目の前の席の男は惚ける。
「え、零が来てること知ってたの?」
「出て行く時、ちょうど座ったのが見えた。」
「零も燈真のこと訊いてきたから、さっきまでいたんだけどとは言ったんだけど。帰ってくるの知ってれば、教えてあげられたのになぁ」
空生と違って。
崇は嘘が、いや、演技が非常に下手だ。
なんとかはぐらかそうとしてみても。
「崇がいない間に、なんか電話が掛かってきて、どっか行っちゃったよ?」
葉月が勝手に答える。
何から何まで。
詰めが甘すぎる。
何年一緒にいると思ってるんだ。
「へぇ。崇もどっか出掛けたの?」
俺に隠せると思うなよ。


