纏わりつくような、埃っぽい暖かさを感じるようになってきた季節。
フロントガラスに付いた花粉を拭う為に、ワイパーを動かして、失敗したと思った。
《…中々、落ち込んでて、俺も課が変わってしまったんで…忙しくて、会えてなくて…この先どうすればいいか…》
電話の先から聞こえてくる報告は、思ったようにはいかない。
藤代も、花音を落とせない。
空生も、俺の手に落ちてこない。
じゃ、いっそ、どっちかを終わらせてしまおうか。
そうすれば、落ちざるを得ないから、ね。
「その、相手の女に、俺からも釘さしてあげるから、この件、それで終わりにしない?納得できるよう、話してあげるから。」
《………そ、れは…櫻田と会うって事ですか?…》
「会社近くの、名前のない真っ黒な店わかるでしょ?あそこに今晩連れて来て。」
風が強く吹いていて、びゅうびゅう、と音を出す。
それが耳障りだった。
《………》
「その女が空生に戻ってもいいの?」
俺は、心の底から、嫌なんだけどね。


