戻ってきた空生は、全く使い物にならなかった。
何せ、女に触れられなくなったんだから。
他人を被せても被せても、空生は、空生から脱せなかった。
戻ってしまう時がある。
それは、詐欺師には、一番あってはならないこと。
能天気女の存在がチラついて、ウザい。
接触はもうない筈なのに、空生の中に居座っている。
何を見たんだ。
あの女に、何を。
光なんて、誰も持っていないんだ。
なのに、いつまでも勘違いしてんなよ。
「なんだよ、たまに顔見せたかと思ったら、そんな端っこでしょぼくれててよぉ。どうしたんだよぉー?」
崇は、空生が帰ってきたことを表面上では喜んでいるが、本当の所、縁を切ったつもりでいたらしかったから、複雑な心境に違いない。
空生の変化にだって、とっくに気付いている。
空生自身も戸惑っているのは、目に見えている。
今も仕事が上手くいかず、疲れ切った表情でカウンターの端に座った所だ。
「そういう崇こそ、珍しいじゃん。一人酒なんて。」
「俺だって、たまーに考え事をすることだってあるの!」
言い合いは、聞いてて退屈しないけど、変わった空生には、少し退屈していた。


