藤代と会ってから、暫くして。
《言われた通りでした。俺と会ってから、あいつ、櫻田の前に姿を見せなくなりました。》
藤代から報告の連絡が来た。
こうなれば、空生は独りっきり。
けど、万が一、引き返せないように、帰る道は、破壊しておこう。
空生には、こっちへ帰ってくるように、仕向けて。
いやきっと、仕向けなくても勝手に帰ってくるだろうけど。
そしたら、元通りになる。
ルナの二階。
いつもの定位置で、煙草の煙が天井に立ち上るのを眺めつつ。
「全部、今迄通りになる。」
俺は笑った。
不要になったものは、邪魔なものは、排除していいって。
使えるものは使えば良いって。
俺はそうやって教わってきたんだよ。
弱い者は、強い者の下に。
権力の下、ひれ伏すのは、いつだって、当事者じゃない。
耳に当てたスマホの向こうから聞こえるのは、不機嫌な声。
「久しぶりなのに、その態度はないんじゃない?」
あの夜、別れてから。
空生がこの街を離れてから、初めて声を聞いた。
「…いや、どうしてるかな、と思ってね。」
喧嘩別れしたなんて、微塵にも感じさせない程、他愛のない会話を数回やりとりしてから。
「勘違いしてるみたいだったから、ひとつ忠告しておくね。出て行く時に言えばよかったなぁ。」
お前の身の丈って奴を、今一度教えてあげるね。
「空生、さ…所詮詐欺師は詐欺師で生きてくしかないんだよ?今更捨ててどうこうって道は、ないんじゃないかな。」
きっともう既に、嫌って言うほど再確認してる所だと思うけど。
「どうあがいたって普通の世界にはいけない。」
羽は残さず毟り取っておかないといけないから。


