「葉月、出てきなよ。」
子供みたいな泣き声の合間合間に聞こえる、「なんで教えてくれなかったのよ」と俺を責める文句。
「……」
声がクリアに聞こえるなと。
ふと見れば、クローゼットに先程までなかった隙間ができている。
「仕方ないでしょ。零が言ったのだって、ギリギリだったんだから。」
俺だって不本意だと、心の中で呟いた。
「……次はいつ、帰ってくるの」
途切れ途切れの問いかけが耳に届き、どうだろうなと考える。
「……直ぐに帰ってくるか、もうニ度と帰ってこないかの、どっちか」
「何それ!」
「わ」
途端に、葉月がクローゼットの中から飛び出してきた。
「直ぐにもおかしいけど、もうニ度と帰ってこないって何?!」
泣き腫らした顔は、正直言って不細工。
びしゃびしゃに濡らした顔をタオルで拭い、キッと俺を睨みつけている。
「知らない。根拠はないけど、勘だよ」
「勘なんかで、勝手に決めつけないでよ!」
葉月はそう捲したてると、再びクローゼットの扉をピシャリと閉めた。


