ルナに寄らずに、家に帰ると、葉月の脱ぎ捨てた靴が玄関に転がって、俺を見上げていた。
この様子だと、きちんと最後までバーを開けていたのか、ルナの戸締まりはちゃんと出来たのか、不安だ。
全て放り出していても、おかしくはない。
リビングをぐるりと見回して、散乱したアウター、ネックウォーマー等の衣類を確認すると、俺はまた廊下へ戻る。
玄関を入って直ぐの部屋は鍵がかかるのに、かかっていた試しがない。
ノブに手を掛けてひねれば、簡単に開くドア。
外は明るいのに、カーテンを引いて締め切った部屋は薄暗い。
床に散らばるのは。
使用済みティッシュの数々。
タオルの数々。
保冷剤の数々。
それを避けつつ、葉月の隠れているいつもの場所の前に立った。
「…葉月。」
パンパンのクローゼットを見つめつつ、名前を呼ぶと、啜り泣きが大きくなる。
頭では面倒なことはごめんだと思っているのだが、大人の図体をした人間にいつまでも引き込もられるのは、もっと困るのだ。


