1107号室に入って、部屋が真っ暗なのを知りつつも、構わず廊下を突っ切り、窓を目指す。
眼下の広がる夜景は中々のもので、同時にまた、烏の存在を俺に思い出させた。
ー自分の方が、高い位置に居ると思っていたら、その内、足元すくわれる、かな。
それでも。
櫻田花音に向けていた侮りが、もしかすると後々自分の首を絞める事になるかもしれない、なんて、この時は思わず。
あの女がしていった余計なことの解決策ーつまりルナから離れていってしまった空生を、どうすればもう一度引き止められるか、そればかりを考えていた。
さっきから何度も鳴っているスマホは無視していたが、恐らく葉月辺りだろうと思う。
今頃半狂乱になって、零が居ない事実に、何かしらそうではない理由付けをしていることだろう。
それが分かっているから、なんとなくルナには帰りたくない。


