「結果、彼は生きる理由を見出して、今幸せに暮らしています。めでたしめでたし。」
「そんなことないっ!!!!」
自分に拍手をしてやりたい位だ、と思っていたのに、花音はポロポロ涙を零しながら、立ち上がってしまい、激しく怒っているようだった。
「ー何が?」
予想通りの反応に、笑いが漏れる。
「何がって…中堀さんはっ…」
「ストップ。」
そしてそれに、俺は待ったをかける。
「俺、言ったよね?これは世間話で、おまけだって。誰の話でもない、ね?」
だってあんた自体関係無いんだからさ。
「そんな…」
部外者は、黙ってなよ。
「さ、おまけの話はこれでオワリ。さよなら」
二週間ていう、短い期間だったから、これで切ってあげるけど。
いつかの女みたいにしつこく付きまとってたら、容赦はしないよ。
だから。
ー次会ったら、最後だと思ってなよ?
俺はそう心の中で呟きながら、踵を返し、エレベーターホールに向かった。
「貴方に利用されただけじゃないですかっ」
泣きじゃくりながらだというのに、投げ付けられた言葉ははっきりしていて、その中に、震えるような強さと怒りを感じる。
ー利用、ね。
エレベーターを呼んで、数字が点滅するのを目でぼんやりと確認しつつ、花音の言葉の端々に感じる、偽善的な感情がうざったらしく思う。
花音からは、俺はもう見えないだろうけれど。
「そんなんじゃ―…」
泣く、聞こえない悲鳴のような掠れた息はまだ俺には聞こえる。
「中堀さんが…かわいそう…」
同時にエレベーターが着て、乗り込むと、俺は背中をそれに預けた。
「かわいそう、ね」
そして、子供みたいな表現に笑う。
「利用」されて「かわいそう」
ほんと、馬鹿な女。
ルナにいる人間は、皆、そういう人種ばかりだ。
けど。
「かわいそう」じゃない。
かわいそうなんかじゃない。
決して。


