その日は、静かだった。
いつもと変わらない筈なのに、何故だか、とても静かに感じた。
「…おにいちゃん、もう良いの?」
バーカウンターに立たせた葉月も、まだしおらしい態度を取っている。
「いいけど。もう直ぐ、俺出るから。」
時刻は23時を過ぎた辺り。
果たして、葉月は、零の不在に気付くだろうか。
今の状態を見る限り、葉月は今日はまだ、零の携帯を鳴らしてはいないようだ。もしも鳴らしていれば、携帯が解約されている事実を知って、半狂乱になり泣きじゃくって、今頃は自ら引きこもりになっている筈だから。
それは毎度の事で、葉月はまた、ここ〔ルナ〕で零の帰りを待つ。
零は必ずここに帰ってくると、信じてるから。
俺と繋がってると、確信してるから。


