ルナでの演奏は、空生にしては珍しく長く続き、終えた後も空生はカウンターには近付かなかった。
俺も、演奏後に増えた客に忙しく酒を出していて、自分の思考をシャットアウトしなければならなかった。
そして、夜明け。
スタッフを家に帰した時になって、やっと色々見えるようになって、気付く。
空生と崇は、どこへ行ったんだろう、と。
ガラン、としたルナ。
さっきまではあんなに人が沢山いたのに、その熱気すら残ってはおらず、暖房が掛かっているのに、少し寒い。
何だかすごく疲れて。
俺もそろそろ帰らなくてはとカウンターの奥から出た所で、目に入った見覚えのある鍵。
それはいつものように、グラスの中にはなく。
居場所をなくしたかのように寂しげに、ぽつんとカウンターの隅に置いてあった。
その端の席は、金髪の少年が、初めてルナに来た時に座った場所。
「挨拶もなしかよ」
自分の持つ鍵の束と打ち合って、チャラチャラと音を立てる。
ー帰ってこないってことか。
もう、ルナには帰ってこないと。
そう、主張している。
ーいや。
出来るわけがない。
そんな簡単なもんじゃなかった筈だ。
そんなことは。
絶対に、許さない。


