「兎に角。次はやらない。もう、ターゲットを紹介されても受け付けないから」
はっきり言い切った空生。
ターゲットとか。
そんなんじゃなくて。
そうじゃなくて。
「ほらほらほら!さ、座って座って!今夜は零の最後のステージなんだからさ、仲良く仲良く!!」
痺れを切らした崇が、見合う俺等を引き剥がす。
「っー」
空生は俺のことをじっと見ていたが、俺は見ていられなかった。
「俺、ステージ立つって言ってないけど…」
背を向けた俺に聞こえてきたのは、空生の、いつもと何ら変わらない口調。
「え!当たり前だろ。こんな急に居なくなったら、ファンが悲しむよ。今日ここに居ないコ達はしょうがないけど、せめているコたちの為に、出てやってよん。」
崇も、流石得意分野だ。
飄々と空生に指示を出す。
「俺も聴きたいしねぇ。」
一瞬の沈黙の後。
「葉月は?」
訊かれた質問は、もしかすると俺に向けてだったのかもしれない。
「あぁっと…葉月はねぇ、えっとねぇ、ちょっと謹慎中。」
「なにそれ。」
ハ、と軽く笑って、空生は、いつものように、席を立ち、ステージに向かったはずだ。
辺りは騒がしいから、勿論足音なんて聞こえないけれど。


