「……そんなんじゃない。あいつとはもう会わない。」
「ええ!じゃあもうクラブにこないのかよぉ…」
一呼吸置いた後の空生の答えに、崇が瞬時に反応するけれど。
「…そんなこと、一言も言ってなかっただろ。突然、どうしたんだよ。」
俺の頭の中では、疑問符が飛び交っている。
有り得ない。
ある筈がない。
辞めるだなんて。
空生の口からそんな言葉が出てくるなんて。
「そうだよ、どうしたんだよ?まぁ、俺は止めねぇけどさ。」
崇にはいっそのこと黙っていて欲しい。
ー空生が辞めるのが何を指しているのか、知らない癖に。
ただ単に詐欺師を辞めるんじゃない。
復讐を止めるんだ。
まだ終わっていない復讐を。
ーここまで育ててやったのに。
「別に。特に理由はないよ。もう、女の機嫌取るのに疲れただけ。元々いつかはやめようと思ってたし。」
お前にとって。
この事はそんなもんだったのかよ?
その程度だったのかよ?
涼しい顔して、グラスに口付ける空生に。
「おい、やめろって、燈真!!」
気付けば、カウンター越しにつかみ掛かっていた。


