空生の言った、【清算】の次の日の夜。
23時55分。
「あ、零。なんか、久々。」
空生が静かな顔をして、ルナの裏口から現れたのを、崇が出迎える。
「何飲む?」
俺も中々の上機嫌で、カウンターから声を掛ければ。
「アブサン」
答える空生の注文に、崇と、俺の手が、一瞬止まる。
「…珍しいね?初っ端から?そのままは、ここではあんま出さないけど?」
「ないの?」
「いやあるけど…アブサンカクテルにする?」
俺の勧めにも、空生は従わずに。
「ストレートで、頂戴。」
そうとだけ言って、崇の隣に腰掛けた。
零の存在に、数人の女達が気付き、遠巻きに色めき立つ。
それを横目に、俺はざわざわと胸騒ぎがするのを感じつつ、グラスを用意した。
「何アブサンなんか頼んでるんだよ。零の癖に生意気な。」
崇が茶化して、空生に振るが。
「やっと崇と離れられると思ったら嬉しくてつい、ね。」
「はぁ?何?!どういう事だよ?もう行っちゃうわけ?!」
瞬時に完全にはぐらかされて、ついでに空生のペースに持って行かれている。
「まぁ、こっちのゴタゴタは取り敢えず終わったから。」
「なんだよなんだよ。いつ行くんだよ。」
「明日。」
「出た、出ましたよ。恒例の明日いなくなります。マジふざけんなよ、そのサプライズ的別れ。」


