「お、かえんの?」
朝方になると、空生がジャケットを羽織って裏口に向かう姿に、つい声を掛けた。
面倒そうに振り替えった空生は短く、必要最低限の返事だけするもんだから、可笑しくて、笑ってしまう。
「なぁ、やっぱりなんか怒ってんの?」
不機嫌そうなその態度と表情に、自分で気付いてる?
「…別に」
いくら無表情演じてても、俺から見れば、不貞腐っていると分かる。
「俺は忠告してやっただけだよ?花音ちゃんのこと。」
敢えて名前を出せば、意図的に空生は俺を睨みつけた。
「その名前、出さないでくれる?」
「おーこわ」
両手を広げて降参のポーズをしてみせる俺に、不愉快そうな表情を隠さないまま、空生は躊躇うことなく寒空の下に出て行った。
使った女との清算は、いつもすんなりと終わらせるのに。
どうして、イツモトチガウノ?
ガチャンと、閉まる鉄扉の音が、やけに耳障りだった。


