日付が変わる頃。
零の機嫌は悪いまま。
だが、何かを振り払うように、零はステージに立っていた。
俺はそれを二階から観ている。
冷えた手すりが、じわじわと熱を奪っていくままにして、ただぼんやりと。
カウンターに目をやると、葉月が注文通りに客の前にグラスを出していきながら、ほとんどの神経をステージに向けているのが見える。
崇はといえば、ボンベイサファイアの瓶と何か語り合っている。
外は雪が降りそうなほど寒くて。
ルナの中はそんなの関係ないとばかりに熱い。
ただ、俺の手の内だけが、そんな温もりは、嘘っぱちなんだよと。
だって一歩外に出れば、こんなにも凍えてるんだからと。
ここはただの幻影。
一番それをよく分かっているのは、お前だろと、囁く。
俺だけじゃないんだと、俺は言い返す。
ここには。
この場所には、その寒さを知る奴が、居てくれるんだ、と。
だから、偽りの熱であっても、いいんだ、と。


