薄っすら持ち上げた瞼は、あっさり下がってくる。
が。
「女追い掛けてった!!!」
ーは?
瞬時に俺の意識がはっきりすると同時に、泣き声が響き渡る。
「なんなの、なんなのよ、あの女…い、今までっ…」
私より優先した女は居なかったのにー
葉月は、泣きじゃくりながら、そう言った。
「ー何で?」
ソファから身体を起こして、訊くと、突っ立っていた葉月は、途切れ途切れに状況を語る。
ただ相槌を打ちながら、視えてくる、事のあらまし。
会う約束をしていたわけではない、偶然、ばったりルナの前で会っただけ。
声を掛けられたのではない。女の友人が、女の名前を呼んだだけ。
それだけ。
それだけなのに。
今迄どれだけの女が、空生に縋り付いても泣きついても、何しても、何の意味もなさなかったのに。
「……女の名前は、何だったか覚えてる?」
「覚えてるよ。」
涙の筋を幾つも頬につけながら、葉月は睨むように俺を見て。
「カノン」
はっきり、その名を響かせた。


