腕組みをして、怒りを露わにしている葉月。
「……うるさ…」
「あっ…」
カウンターから顔を上げた空生が、迷 惑そうに呟き、立ち上がると出口へと向かう。
「零っ、待って!待ってよぉ。どこに行くのよぉ!」
途端、葉月は慌ててその後を追い掛けるが、長身の空生とチビの葉月じゃ、一歩が違う。必然的に小走りになる妹を、呆れ顔で見送った。
ー懲りない奴だな。
何度断られても、すっぽかされても、めげない。
空生のことだ。映画に観に行くなんて絶対に口にしていないと思う。恐らく、別の事で返事した空生を、葉月が都合良く解釈しただけだ。
ーさて。開店までまだかなりある。休憩取ろうか。
まだ、昼を過ぎたばかりだというのに、なんだかどっと疲れた気がする。
「ー寝不足、か…」
吹き抜けの天井を見上げながら呟いた。
引っ掛かるな。
空生は。
眠りさえ、拒絶していなかっただろうか。


