「あっ、ご馳走様でしたっ。あの、でも、私、もうクラブには行けません…」
手付かずのプレートを残したまま、店を出て行こうとした俺は、もう振り返りたくない筈なのに、そうせざるを得ないカノンの発言。
「え?」
ークラブには行けない?
どういうことだ、それ。
俺は思わず振り返って、カノンを見ると、彼女も腰を浮かした状態でこっちを見ていた。
「…いけないってどういうこと?門限でもできたの?」
冗談めかして、軽く笑いながら問えば。
「いやっ、そういうのじゃないんですけどっ…中堀さんが…」
笑えない名前が再び出てきた。
ー空生が?
「…零が…?」
些か冷淡な態度は、自覚した上でのこと。
「あ、と…はい。」
察知したらしいカノンの顔には、はっきり、しまった、と書いてある。
こんな馬鹿な女なのに。
「…クラブには、、もう来るなって」
なんでそんなに囲うワケ?
「……へぇ」
空生。
「じゃぁ、仕方ないね」
作り笑顔で悪感情を取り繕いつつ、カノンに今度こそ別れを告げた。
ー勝手なことしてんじゃねぇよ。
飼い猫に毒吐きながら、咥えた煙草に火を着ける。


