ー普通?普通って、どういうことだ?
一瞬、普通の定義が分からなくなった。
大抵人というものは、相手がこう答えるだろうとある程度予測しながら会話をしていると思う。
だが、カノンの今の答えは、俺の求めていたものではない。
真逆だ。
ずっと本人には訊かないでいる質問が、俺の中でまた繰り返される。
ー空生。
この女。
何が、他と違うんだ?
「本当に?あれでも、零はひかなかったってこと?」
その心情は、言葉になって零れ落ちた。
カノンの顔にはどうして俺がこんな風に驚いているのか分からないと書いてある。
「…益々面白いね。」
俺の知らない所で、知らない空生が居るらしい。
俺は独り言ちて、席を立った。
「これからまた用事があるから、俺はもう行くけど。カノンちゃんはゆっくりしてってね。あと、たまにはクラブにも顔を出してくれない?崇が喜ぶ。」
まだ、間に合う。
空生とカノンの日は浅い。
契約違反は、許さない。


