誰もいない部屋で、次に目を覚ましたのは、10時。
暫く空っぽの頭で、ぼうっとして、 それから煙草に火を点けた。
そしてまたぼうっとして。
「飯食いに行くか……」
一人言ちて、支度を始める。
特段腹が空いた訳でもないが、このまま家に居ても、いつ葉月が帰ってくるか分からないし、店のスタッフからも、試作品を見に来て欲しいと言われていたのを思い出す。
ジャケットだけ羽織って玄関を出れば、冬の寒さに身を縮こませた。
ー空生の奴、今日はルナに顔出すかな。
不意にそんな事を思うと同時に一抹の不安が過る。
それを追い払うように隅に追いやって。
俺の平常に入り込まないよう要塞を築く。
大丈夫。何も変わらない、ほんのもう少しすれば、すっかり元通りになる。
そう言い聞かせる。
「さて行きますか。」
一人で呟き。
ズボンのポケットに手をつっこんで、歩き出した。


