「…え?」
慌ててきょろきょろ辺りを見回すカノン。でも気付かない。
こんな女に、空生がどうにかなんて、あるわけない。
そんな可能性は1パーセントもない。
ゼロよりゼロに近い。
威嚇するまでもない。
何かの間違いか。
完璧冷徹人間の空生でもミスするっていうことか。
僅かに悩んでいた自分すら馬鹿馬鹿しく感じるし、無駄に思えてきた。
「ヒント、あげよっか?」
「…欲しい、です」
「うんうん、カノンちゃんは素直でよろしい」
「だけど、ヒントの代わりになんかちょーだい」
「よせよ崇。ほんっとお前懲りねぇ奴だな。」
脱力した俺は、馬鹿男と馬鹿女のやりとりも、しょうもなく感じ、いつもの調子で諌める。
「いいじゃん、俺カノンちゃん好みなんだもん」
ぷくっと頬を膨らませる崇は、気持ち悪い。
気持ち悪いが。
「ほっぺにちゅーしてくれたらヒントあげる♪」
先日の崇の独り言にも近い宣言を俺に思い出させた。


