零を知らない、ということは。
今演じている役者として、接点があったということで。
『ターゲットじゃないけど仕事に必要な役者だ。』
ー引っ掛かる。
何故今。役者として会ったわけでもないのに、零として連れて帰る?
崇から奪って迄。
「腹立つな、零の奴。」
崇の呟きで、思考が彷徨っていた俺は、はっと我に返った。
「仕方ないよ、崇が唾つける前だし。」
そう言うと、崇がニヤリと笑う。
「…そうか」
この時もっと早く気付いていれば良かった。
もっと疑ってかかっていれば良かった。
「唾つけりゃ良いんだよな。」
空生がメリットもなしに、他人に触れるなんて事は今までなかったのに、あの引き寄せ方はおかしいと。


