病室とは思えない程広い部屋は、薄暗かった。
その真ん中に置かれた、大きなベッド。
10年、直に見なかった人間は、液晶画面で観るよりも、小さく痩せ細って、そこに寝かされていた。
最初、近付くのが躊躇われた。
が。
小さく燃える火みたいな感情が、力となって、身体を動かす。
それはいつかのように、段々と大きくなっていく。
「……久しぶり、ですね。」
自力で息を出来ない人間が、答えられる筈もないのに。
「俺の事、わかる?」
訊かずにはいられなかった。
バイタルは、安定している。
それが無性に腹が立つ。
「どんくらい、忘れたの?」
目を開きすらしない。
ピクリとも動かない。
俺は。
「都合の悪い事は、皆消した?」
こんなにも。
「昔っから、それが、あなたの、やり方だったもんな?いつもー」
苦しいのに。
「俺を、見ない。」
もうずっと、長い事。
息なんか吸えてないのに。
「あんたは、いいよね。そうやってー」
狡いよ。
今までも、あの時も、そしてこの瞬間も。
「要らない記憶を消して、逝くなんてー」
許せるわけないだろ。


