「ーまぁ、そんなもんかな。」
俺等が見上げた先にあるのは、木材に渋墨塗りを施した、建物。
地植えにしたしゃらの木が、季節に反して、緑色を提供している。
来秋になれば、紅く色づくだろう。
「すげーすげー!早く中に入れろよ!」
「入れば?」
「ーえ?」
興奮気味に急かす崇に応え、道を譲ると、崇はわかりやすく固まった。
「入ればって言ったって…鍵持ってねぇもん」
「開いてる」
「はぁ?まじかよ。不用心だなぁ。じゃぁお言葉に甘えて、おっ先~」
俺は空生の隣に並んで、意気揚々と建物に近づいて行く崇を見る。
「…なんかあんの」
空生が、そんな俺にポソリと訊ねた。
「ーまぁ、ちょっと、ね」
腕組みをしながら、小さく笑ったが、空生はそれ以上は訊いてこない。
代わりにー
「うわぁ」
シルバーの取っ手を引っ張った崇が、中を見て、情けない声をあげ、こっちにダッシュしてくる。


