空気が止まったかのように見えたー
ガシャン
「ーっ」
気付けば、目の前の鏡が、蜘蛛の巣状に割れて、自分の情けない顔も同様にぐしゃぐしゃになっていた。
そのど真ん中にある拳からは、ツ、と赤い雫が滴る。
ー『ショートの女』
痛み、なんて。
もう感じない位。
慣れてきている。
なのにどうして、人は、癒しを知ると、傷が際立つようになるんだ。
どうして。
光なんてあるんだ。
どうして。
闇を際立たせるんだ。
ズルズルと、ついた拳をおろすと、血の線も、下に伸びる。
ー『暇を見つけては、色んなクラブ巡って捜してるらしい。』
「…相変わらず勝手なんだな」
あんた一人が頑張ったって。そうやって空気読まないで、思った通りに行動したって。何にもならないって、未だにわからないのか。
捜してどうするんだよ。
見つけてどうするんだよ。
これ以上、惨めにしないでくれよ。


