Live as if you will die tomorrow

足下に散らばったガラスの破片もそのままに、精一杯取り繕った顔で、その場を後にし、二階へと上がる。


ーどんな、顔してるって言うんだよ。


何も思ってない。
何も感じてない。

あんなのは。


ずっと前の、過ぎた日の話だ。

あの時だって何も思わなかった。

今だって、何とも思ってない。



なのに、何故。

階段を上る際の、カン、カンという音も、いつもと違うように聞こえ、何かに追われているかのような妙な切迫感に纏わり付かれて、急ぐのに、足取りが重い。

スタッフルームとは反対にある洗面所に入って、鏡を見ずに、顔を水でバシャバシャと洗った。

それは、無意識の行動ながらも。

もし本当に表情が変わっているのなら、洗う事で、それが少し和らげられるような気が、したからかもしれない。


どっちにしろ、無駄な足掻きだった。




「…はっ」



顔を上げて、三面鏡に映った自分と対面し、声だけで笑った。





俺を見つめる青年は。


どこか痛いところがあるみたいに、顔を顰めていて。


吐き出したい何かがあるのに、堪えている。


そんな顔をしていた。




更に悪いことに。


無理に笑おうとすると、まるで泣いてるかのように見えた。