Live as if you will die tomorrow

ー怒ってる…?


自分が一番驚いている。

動揺するなんて感情が、自分に残っていたなんて。

そんな、人間らしい、弱い部分が。



「なんか、新作、ある?」



背後の棚に、寄りかかった所で、誰も居なくなったカウンターに、馴染みの客が顔を出した。



「ー悪いね、今夜はもう品切れ、閉店。」



顔の筋肉を緩ませて、申し訳なさそうに謝って見せる。

貼り付いた笑みが、消えることなんて今までなかったから、上手く取り戻せているのかも分からない。



「えー、そういうこともあるんだね。っていうよりか、トーマの不調が原因?」



別段、気分を害されたようではない客の反応は、俺からすれば、自分に非があると理解するに十分なリアクションだった。



「ーそう、見える?」



なるべく笑顔を意識して訊き返すと。




「うん。初めてだな、トーマのそんな顔。」



笑うってこと自体が、一体どんなだったのか、自分の表情が、どんな風に見えるのか、まるでめちゃくちゃな柄のパズルのピースを持たされたかのように、理解出来なくなった。