そんな崇を無視して、俺等に背を向けた空生に声を掛ける。
「零、今どんな感じ?」
「…まぁ、まぁな、手応え。あと、3日位で終わるかな。」
人々の喧騒があるのに、空生は振り返ることもせずに、そう言った。
聞き取れた自分を褒めてやりたいくらい、聞き取り辛い。
「あと3日、ね。」
確認するように呟いてから、カウンターに向き直った俺はこれからのオンブラの駒の進め方を考える。
崇は、既に新顔の若い女に声を掛けていて、それが視界の端に映るのを避けつつ、冷蔵庫へ回れ右しかけた所で。
「ーそういえば…」
「…びびった…」
とっくに居なくなったと思っていた空生が、まだそこにいて、しかも珍しく振り返って、俺を見ていたもんだから、驚いて思考が止まる。
「なんだよ、出てったんじゃないのか。」
驚かせんなよと、軽く八つ当たるが、空生は表情を変えず。
「こないだ、横濱のクラブで、燈真の知り合いって女に会った。」
感情も何もない口調で、そう言った。
「ー横濱…?」


