崇の女癖の悪さは最初から分かっていたことだが、何しろ見境がない。


カウンターの客も構わずだし、空生狙いの女も、空生の女も、関係ない。

勿論落ちる女も女だが、元々謎も多く、素っ気なく、本気で人を好きにならない空生相手だ。特にターゲット以外の付き合いで、空生の愛想は無いに等しい。満たされてる筈もなく、逆に崇は愛想が良い。簡単におだてるし褒めるし、気分は悪くないだろう。

そうやって何度となく空生の女が、崇の食い物になる所を見てきた俺としては、結構うんざりだけれど。


そして、空生は一度そうなった女には、二度とチャンスを与えなかった。


二度と、側にいることを許さなかった。







「葉月の教育に良くないから、もう少し自粛して欲しいな。」






カウンターに戻ると、空生はさっきと変わらない位置でグラスを呷っていて、崇もつまらなさそうにちびちびやっている。

居なくなったのは一人だけだ。



「何がよ。」



無反応の空生と違い、崇が上目遣いに返してくる。



「お前の女癖の悪さだよ。」



俺は待ってましたとばかりにお灸を据えてやる。


空生の女が、翌日崇の女になっているのを、葉月が見たら何ていうかわかったもんじゃない。