海月物語。

「この、バカ海斗~~!!」
海斗は上司に呼び出されていた。
「お前は、今日で何回目だ?」
「すみませんでした。」
「すみませんですむか。大事なショー本番で合図を間違えるとは、このばかちんがーーー!!!!」
「す、すみませ~~ん。」
海斗は、深々と頭を下げ足早に去った。来海が社宅に移ってから、なんとなく元気がでないでいた。イルカショーでは、気持ちを切り替え、取り組んでいるつもりだったが、イルカのティンクは、海斗の不安定な心情を察知しているのであろう。海斗の指示を無視し、言うことを聞いてくれないようになった。挙げ句の果てにティンクの機嫌が悪くなり、ショーの途中で芸をやらなくなってしまった。こんなトンチンカンなショーをもう何回披露してしまっただろうか。上司が怒るのも、無理はない。