海月物語。

 海斗は、台所へ移動した。
「飯は?」
来海は横に首を振る。
「今日もおかゆのレトルトだな。」
そう言うと海斗は、鍋に火をかけた。
「昼も食べてないの?」
海斗が来海の横に戻る。
「欲しくない。」
来海が呟く。
「ダメだよ。食べなきゃ。来海ちゃんの腕、骨見えそうだよ?」
海斗の言葉を受け、来海は自分の腕を見た。
「いつも、今ぐらいの時間に帰ってくるんですか?」
来海が海斗に聞く。
「うん。水族館も、世に言うブラック企業だね。」
海斗は笑う。
「でも、魚好きだから。サカナクンほどじゃないけど。」
鍋がフツフツ言い出した。海斗は台所へ再度行く。
「あの部屋、女の子の部屋だったんですか?」
来海は今日気になったことを率直に聞いた。
「うん。俺もほんの少し前失恋したばかりなんだ。」
海斗の顔は、相変わらず笑顔だった。