抜き差しならない社長の事情 【完】



相原がどこからか持ってきてくれたボックスティッシュに手を伸ばし、

涙を拭いたり鼻をかんだりして、グラスの水をコクコクと飲んだ紫月は、


疲れ切ったように俯いたままポツリと言った。



「課長、私、

『Kg』辞めてもいいですか……」



少し呆れたように頬杖をついて紫月を見守っていた相原は、


「まったく、なに深刻ぶってんだか」

と笑って、大きく伸びをした。


「辞めたってたいしたことじゃないだろう?
戦国武将だって逃げる時はとっとと逃げるんだ。

家康なんて漏らしながら逃げたって言うじゃないか」


「やだー もぉ」



「いいんだよ、辞めたって。

お前が逃げてばっかりじゃないから言うんだぞ。
ずっと頑張ってるお前だから言う。

ケツ捲って逃げてやれ」


 クスクス


「俺が許す、逃げろ紫月」


「はい!

 夢野紫月 思い切り逃げさせてもらいますっ」



 クスクス