抜き差しならない社長の事情 【完】



――ぁ……



本当の事を言ったら、楽になれるかもしれない……



 そうは思ったものの



「――切野 社長は……」


全てを言う勇気はなかった。



結局
紫月は上手い言い訳を見つけることもできず、

嘘の中に真実を隠した。



「――そっくりなんです。元彼と。
そっくりなんですけど、中身は全然違うんです。

彼は一途で優しい人だったから―― 
とっても優しい人で…… 

私もその彼と付き合っていた頃は、こんな風にイヤな女じゃなくて」


そう言いながら紫月の目には、また涙が溢れてきた。




「社長の前に出ると、

自分の中の醜さばかりが思い知らされて……」




 ヒック

「あー……また泣く…… しょーがねぇなぁ」

「すい ませ…ん」



「あのな、お前のどこがイヤな女なんだ? お前は可愛くていい女だぞ、俺が保証する。

だいたいお前はハッピーにいた頃から片っ端から男をフッてるだけで、モテるじゃないか」