「アハハ、うれしいことを言ってくれるなぁ、
お前は器用じゃないから、もしかしてまだ慣れないのか?」
「すっかり慣れてるよなぁー
珈琲もブラックが飲めるようになったし」
クスクス
幸田社長と相原課長を前にすると、
懐かしさと同時に
失ってしまった大切なものを目の当たりにしたような気がして
紫月は胸が熱くなった。
――せっかく私の為を思って用意してくださった転職先なのにごめんなさい、辞めるんです
なんてことを、言えるはずもなく……
様々な事が頭の中を駆け巡り、
「社長…… ありがとうございました。本当に」
そんな風にお礼を言うのが精一杯で、
言えない想いが涙になって
紫月の頬をつたって落ちた。
「おいおい、泣くなよ紫月」
「――だって、
本当に社長、よくしてくれたから……」
「こらこら、しょーがないなぁ」
「わ、私は、泣き上戸なんですよぉ
ヒック……」



