抜き差しならない社長の事情 【完】



  ***




金曜日の夜。



――ここか……



のれんを潜り、ガラガラと扉を開けると

「いらっしゃいませ!」

賑やかな居酒屋の一角で、紫月に手を振る2人がいた。



「おーー 紫月元気か~」
「社長!」


ハッピー印刷の幸田社長と相原だ。



「急で悪かったな」

「いえいえ とんでもないです!」


すっかり体調も回復し、手続きやら後始末やらを全て済ませた幸田社長が、
いよいよ田舎に引っ越すことになったとの連絡を受け、
急遽快気祝いと送別会をすることになった。



「お互いの前途を祝して」

「「 カンパーイ 」」



「どうだ? 紫月、
新しいとこ、すごいだろ?」

「はい! もう何もかもがビックリですよぉー
 でも……私はハッピー印刷が懐かしいし、あの頃のほうが良かったなぁ」