秘書になって曄は気づいたことがある。
切野社長には、不思議なほど女の陰がなかった。
ある時、社長と曄が付き合っているという社内での噂について社長に相談すると、
『曄が困らないならそのままにしておいてくれないか?』 と言う。
曄からすれば、噂で特に困ることはないが、
一応理由を聞いてみると、
社長は少し困ったように『なにかと面倒だから』と答えるだけだった。
若くて見た目も良い青年実業家の切野社長がモテるのは当然で、
それをうっとおしいと思う社長の気持ちもわかる気がした曄は
『はーい了解です』と請け負ったが、
ある日、
ぼんやりと名刺入れを見つめている切野社長を見かけた。
名刺入れを見つめるその視線は、
どこか哀しそうで……、
その時以来、曄はずっと気になっている。



