「……?」
ひざ掛けを取りに自分の席に行った曄だが、
社長室の扉が少し開いていて、明かりが漏れていることに気づいた。
仕事ではなく、社長は用事があるから今日の飲み会は欠席すると言っていた。
その社長が社内にまだいるとは思っていなかった曄が、不思議に思い隙間からチラリと覗くと、
社長は何かを手にして佇んでいる。
声を掛けようかと迷ったが、
なんとなく憚れて、
そのまま紫月たちの元へ戻ることにした。
社長が手にしていたもの。
――あれは、あの名刺入れ
曄は時々切野社長があんな風にして名刺入れを見つめていることに気づいていた。
皮と織物で出来た名刺入れ。
社長はその名刺入れを、使うわけではなく
大切そうに机の中にしまっている。



