抜き差しならない社長の事情 【完】




  ***



「よっし、あと一時間くらいで終わるかな」

「先に帰っていいんだぞ、一人でがんばってたんだから」

「ダメですよ! 私のミスだもの。
それに私が一人でやったのはせいぜい三十分くらいですもん。課長こそ疲れてるのに本当に帰って大丈夫ですよ」

などと言いながら時計の針が8時を回ったところで

「あれ? 曄ちゃん」

ひょっこりと社長秘書の曄が顔を出した。



「はーい。差し入れですよぉ」

曄はチャーハンや酢豚の入ったパックを出しながら

「お手伝いしまーす」と言って、

広いテーブルの紫月の隣にちょこんと座った。

「私ねぇ 頭は悪いけど、シール貼りくらいは出来るんですよぉ」




ニコニコと笑う曄を見ながら、
紫月は、蒼太が曄を好きになる気持ちがよくわかる気がした。


曄は本当に可愛いし、嫌味のない優しくていい子なのだ。

蒼太のことを抜きにすれば、もっともっと親しくなることができただろうと思う……。




「ありがとうね、曄ちゃん」

「うふふ、どういたしましてぇ」