「ちょ…… なに」
「触らないで!」
「なに?!
なんだその言い草は!?
触ってないだろ?!
痴漢じゃねぇぞ俺は!」
「私が手をはらわなければ触ったじゃない!
それに痴漢とどこが違うのよ
キャバ嬢囲ったり あっちこっちに手を出して不潔なことには変わりないでしょ!
社長だからって、二度と私に声を掛けないでください!」
「…… お前いい加減にしろよ
曄のこと言ってるのかもしれないが、あいつは精一杯生きているんだ」
「あーそうですかそうですか
私も精一杯生きているんです
別に社長さんには関係ないですけどね!」
チン
開いた扉の前にはエレベーターを待つ社員が数人いた。
彼らは只ならぬ気配を感じたのか少し驚いたような顔をしていたが、
紫月は見向きもせず
急ぎ足でその間を通り過ぎて、走って会社を出た。



