抜き差しならない社長の事情 【完】



ガッカリだ。

 聞けば聞くほどガッカリだ――



創立記念パーティで挨拶をする元恋人の成長した姿に
複雑な思いを隠せずにはいられなかったが、

それでも彼が、誠実に真面目に仕事をしてきたと思えばこそ、
『すごいね蒼太、えらいね……』と、心からの賞賛を惜しまなかった。


なのに

自分への冷たい仕打ちは仕方ないとしても、

一人の恋人だけを大切にしないとはどういうことだろう?



噂話だとしても
そんな噂がたつほど、遊んでいるということなのだろうか?




サイテー……


憤懣やる方ない思いに拳を強く握りながら
エレベーターを待っていると、


チン と扉が開き、





切野社長が目の前に現れた。