抜き差しならない社長の事情 【完】



  ***



次の日、


「え? そんなに?」


帰り際、女子ロッカーで制服の試着をしていると、
紫月から聞いたわけではないのに、総務の保科女子がまた切野社長の噂話をはじめた。



「そうなのよ、噂だとね、切野社長が所有するそれぞれのマンションに別の女がいるんだって」

「……」


「あの調子じゃ社長って独身主義者なのかもしれないわねー 女に困らないしお金はあるし、ほら、たまにいるじゃない、そういうお金持ち。
子供は認知するけど結婚はしないって人。きっとそうよ」


うんうんと自分の言葉に納得するように、保科女史はしたり顔で頷く。



「……なんか社長ってサイテーですね。
私が男なら生涯たった一人の女性を愛して大切にします」


「あらまぁ、紫月ちゃんたらロマンチストね。
結婚してみるとそんな甘い話は夢と散るのよ フフフ まぁ何にせよ切野社長はいいわぁ 私がもう少し若くて独身なら愛人のひとりにしてもらいたいわねぇ」