抜き差しならない社長の事情 【完】



かっこよかったなぁ……



『本日はお忙しい中……』

スポットライトを浴びて挨拶をする切野社長は、堂々として凛々しくて、
紫月の周りにいた女の子たちは皆、

『社長って本当に素敵だよね』

『ライバルが曄ちゃんじゃ敵わないもんなぁ……』

うっとりと見つめていた。






 蒼太……

  いつからコンタクトにしたの?



キスをする時だけ、蒼太は眼鏡を外した。

睫毛が長くて、どこか憂いを帯びたような蒼太の甘い瞳は

 私だけのものだった……。



『紫月、好きだよ……』


 紫月……

    蒼太……






今は自分の中だけに残る、遠い想い出……。


怒るのは筋違いだと、自分でもわかっていた。


自分から離してしまった温かい手が
他の手を握ったからと言って、どうして責めることができるだろう。



――どうか、乗り越えられますように……


静かな気持ちで蒼太の幸せを願える自分になれますように



紫月はそう願いながら、

いつしか潤んでいた瞳で、キラキラと輝く結晶をいつまでも見つめていた……。