抜き差しならない社長の事情 【完】


「夢野さん
  夢野さん?」


 !

茫然と立ちすくむ紫月の意識を引き戻したのは


「! ――専務」

神田専務だった。 


「まったく酔っ払いが多くて困ります」

という専務の視線につられて振り返ると、
酔っ払いが切野社長を睨みつけるようにして離れていくところだ。


「夢野さんは以外と強いんですね」

「え?」

「さっき、絡まれていたでしょう?
 助けに向かおうとしたんですけど、ちゃんと追い払っていたようだったので」


「あ! もしかして取引先の大切な方でしたか?」


「そんなことは気にしなくていいんですよ。
 なんだったら殴ったって構いませんからね。
 酔って女性に絡んだなんて、恥ずかしくて相手も訴えられませんから」


クスクスと笑う神田専務は
「今日の夢野さんはズバ抜けて綺麗ですから、うちの男性社員から決して離れないでくださいよ」
と、人差し指をピンと立てた。