抜き差しならない社長の事情 【完】



すごすごと逃げていく酔っ払いの背中を睨みながら、唇を噛み、

紫月は化粧室へと向かった。


オードブルどころではない。

怒りとショックで食欲も撃沈である。




化粧室で鏡を見ながら、

『紫月、怒る皺ができちゃうぞ、我慢我慢 あんな男ほっときなさい』

そう言い聞かせて笑顔を作ってみた。



フフッ……


『悲しくても笑顔を作ると、脳が楽しいと勘違いをしてくれるんだって』

亜沙美がそう教えてくれた……。




今までもそうだった通り、笑顔を作っているうちに気持ちは少しづつ落ち着いてくる……。


  大丈夫大丈夫、私は強くなったんだから



気持ちが軽くなったところで廊下に出ると、


 ん?

今度は曄が別の酔っ払いに絡まれている。


しかも曄は腕を掴まれていた。


 どいつもこいつもなんなのよっ!

そう思いながら助けに向かうと


 !


どこからともなく伸びてきた手が、酔っ払いの腕を掴んだ。


「星社長、うちの秘書が何か?」

「あ…… あはは」



――蒼太……