抜き差しならない社長の事情 【完】



気づかなかったはずはない。


なのに、
楽しそうな笑みを浮かべ談笑しているその横顔には、

紫月を心配する様子など、つゆほども感じられない。



なによっ!



爆発しそうな怒りにまかせてスマートフォンを取り出した紫月は

キッと酔ったオヤジを睨みながら

「あ、すいませんセクハラ委員会ですか?
 今酔って絡まれて困っているんですが、相手の名前は」

と、一旦そこで電話口から離れ、酔ったオヤジに

「すいません、お名前は?」と、これみよがしに聞いた。


もちろんセクハラ委員会など知らないし
電話を掛けている事自体が嘘である。


  あいつは蒼太じゃない。

 切野社長という名の鬼だ!