抜き差しならない社長の事情 【完】



――せめて……カッコよく


そんな強い決意を胸に、歩き出して角を曲がると、

案の定、曄が楽しそうに笑い合っている相手は


切野社長だった。




なんでもない、なんでもない、と呪文のように心の中で言い続け、

紫月は出来る限り平静を装いつつ、そっと頭を下げながら社長と曄の隣を通り過ぎた。



聞きたくもないのに、

「やだー 社長のエッチー」

 という楽しそうな声と、


クスクスという切野社長の笑い声が聞こてくる。