抜き差しならない社長の事情 【完】



この、心の中に居座る固いしこりを消してしまえば

何もかもが上手くいく!



 そうよ! がんばれ紫月!


 蒼太に嫌われていたっていいじゃないか! 負けるな!



喝をいれるように自分に言い聞かせながら、

紫月は二階の喫茶コーナーに向かった。

ここ『Kg』は、珈琲もココアも、様々な紅茶もタダで飲み放題という特典もある。



「お疲れさまです」

「あ、紫月さん、お疲れさまでーす」


お互いにニコッと微笑んですれ違ったのは総務の女子社員。

彼女は二十代だが紫月とは二つしか歳の差はない。


自分より若い人ばかりだと思っていた社員たちは、
同じくらいの年齢の人もちらほらいたし、相原と同じくらいの社員もいた。


ほとんどが年下なら、居心地が悪かったかもしれないが、
そうではなかったこともまた、

辞めたい理由を一つ消していた。