「知り合いの不動産に頼んで、ここの売り手を探しているらしいんだが、
 俺とお前を引き続き雇ってくれる会社であること。
 そんな条件をつけてくれたらしい。

 泣かせるだろ?」


「――ぇ、  ……社長ったら」



幸田社長という人は、そんな風に社員を家族のように心配する人なのだ。


優しい人だから……と思いながら、

紫月は自分の父親を思い起こた。



――パパも優しいけど、幸田社長以上に経営者としての才能はないから……



 ハァ……




「私も明日、お見舞いに行って来ますね」

「ああ、行って来い。喜んでくれるぞ」