「紫月さん、ネイルすっごく可愛い」
「ありがとう、友達にやってもらったの」
「お友達、器用なんですね~」
曄に笑顔を向けつつも、
紫月の頭の中は、蒼太のことが離れずにいる。
蒼太は、変わったんだ……
紫月が切野社長に会ったのは、挨拶をした初日だけである。
それから一週間が経ったが、
顔を合わせたのは偶然ロビーですれ違った一度きりだった。
その時も、目を合わせたわけではない。
切野社長は隣にいた神田専務と話をしながら歩いていて、
チラリとも紫月を見なかった。
睨んだら睨み返してやる!
どうせなら徹底的に嫌われてやるんだ!
そう心に決めて、戦闘態勢で出勤している紫月としては、
思い切り肩透かしをくらったままだ。



