抜き差しならない社長の事情 【完】


そんな紫月を見て、やれやれと亜沙美はため息をついた。





紫月と友達になった大学でのあの日のことは

今でもハッキリと覚えている。



田舎から出てきて友達もいない亜沙美にとって、

都会育ちのお嬢さまの紫月は、輝いて見えた。


言葉遣いは上品で、
服や身に着けている物の感じから、どうみてもお嬢さまの紫月は、

いつも控え目で、おとなしくて……
同じ女性から見ても憧れるような、素敵な女子学生だった。


その日もいつもと同じように
教室の、前から4列目の端から3番目の席に座っている紫月を見つけた。


授業が終わっても紫月はノートを整理していて教室を出るのが遅れて、

紫月と亜沙美の他、数人しかいなくなった時、

『なぁ行こうよ! 絶対楽しいからって!』

ちゃらついた男子学生に紫月はしつこく誘われはじめた。



『ごめんなさい私……』

おとなしい紫月は、うまく追い払うことが出来ずにいて、

『やめなよっ! 嫌がってるでしょ!』

亜沙美が助けたのだ。


そのことがきっかけになり紫月と亜沙美は親友になった。